観て、聴いて、読んで、体験したアイテムの感動ノート
ブラッドハーレーの馬車/沙村広明 (著)
異色デタラメ時代劇(褒め言葉です)『無限の住人』の作者、沙村広明が2007年に上梓したコミック。

『無限の住人』のファンなので(ただし、連載が終わるまで読むのを止めている)、この新刊が店頭に並んでいるのを見かけて購入した。

…う〜ん…
よくもこんな非道い話を描けたものだ…
エロ系の漫画誌に連載された作品なので、ある程度の過激さはあって良いと思うのだが、これはヒドすぎる。そもそも、エロくないし。
凄惨で、悲しく、胸が悪くなる。
それが作者の狙いなのかも知れないが。
画集『人でなしの恋』もそうだったが、かなりのサディストでないと「楽しむ」ことは出来ない作品だ。
『無限の住人』しか知らない人には、ショックだと思う。
絵が上手いだけに、罪深い人だ。

能登の白クマうらみのはり手 (THE VERY BEST OF Tatsuhiko Yamagami)/山上たつひこ (著)
今月の新刊。

かつてギャグ漫画で一世を風靡した、山上たつひこのベスト撰集、第一弾である。
1970年代中期から、1980年代前期までの短編から選ばれている。

ほぼ20数年ぶりに山上漫画を読むが、かつてあれほど大爆笑した作品が、何故か全く笑えない。
作品が時代とともに古くなるのは仕方の無い事だが、読む側の人間も歳をとるのだ。
これも仕方の無い事だ。

全く笑えないのだが、破壊的でアナーキーな作風には改めて驚く。
そして、作品のカオスを支えるのは、緻密で丁寧な仕事。
Gペンの切れ味も鋭い独特の絵柄は、他に似ているものが無い。

PLUTO―鉄腕アトム「地上最大のロボット」より (5)/浦沢直樹 (著), 手塚治虫 (著),手塚真 (監修)
最近発売された、5巻目。

いよいよこれから佳境に入って行くはずだが、なんとなくこの作家の悪いクセが出て来たように感じる。
どうも話が間延びしてしまって、締まりがなくなるのだ。
単行本一冊分の内容が、薄く感じられてしまう。
まあ、この巻は次へのブリッジとして見るべきなのか…次巻に期待。

鉄腕アトム (13) (手塚治虫漫画全集 (233))/手塚治虫 (著)
浦沢直樹『PLUTO』の原作「地上最大のロボットの巻」が収録されている。

実は、自分が持っているのは朝日ソノラマ刊/サンコミックス版(昭和52年第9版)なのだが、これは現在入手が難しいらしい。この版で既に、手塚が自らオープニングの解説を漫画で描き加えている。それによると、この「地上最大のロボットの巻」はアトムの中でも最も人気のあったエピソードで、手塚が根っからの悪役にしきれなかったプルートウが破壊されたときに、抗議の手紙がどっさり届いたそうだ。
アトムのテレビアニメが人気を呼び、手塚自身もいちばん仕事が楽しかった時期に描かれた作品だそうだ。

いま改めて読むと、アトムの行動にひどい矛盾があったり、差別的な表現があったり、現在のリアル指向の漫画と比べると結構キツいものがあるが、やっぱり泣けてしまう…プルートウがウランと心を通わす場面とか、エプシロンの自己犠牲とか…やはり名作なのである。

手塚は自ら昔の作品を修正してしまう悪いクセ (笑)があるのだが、この作品は全集版ではどうなっているのだろうか?(チェックしてないけど、リンクだけは貼る↓)

PLUTO (1) 〜(4)/浦沢直樹 (著), 手塚治虫 (著), 手塚真 (監修)
現在連載中のコミックで、単行本が4巻まで出ている。
鉄腕アトムの1エピソード「地上最大のロボット」を原作とした、リメイクである。

自分の印象としての浦沢直樹の漫画は、1コマの絵のパワーが薄い。ワンカットの中の情報量が少ない漫画だ。そして、話の展開が遅い。無駄に長いので途中で飽きるのだ。
絵は上手いけれど、魂で描いてない気がする。感情表現も、ステレオタイプにシミュレートされた感があって、のめり込めないところがある。つまり、汗をかいてない感じなのだ。
評判を呼んだ『MONSTER』は途中で飽きて読むのを止めてしまったし、それ以降『20世紀少年』とかも読んでないのだけれど…
この『プルートウ』においても、その傾向はある。

しかし、だ。
なにしろあの原作を、こんな形にして現代に蘇らせちゃったのだ。
しかも、アレンジの仕方は(今までのところ)とても魅力的だ。
原作では、わりとアッサリとプルートウに破壊されてしまった、ドイツのロボット刑事“ゲジヒト”を主人公に据え、アトムは登場人物の一人として、1巻の最後におもむろに登場する。
そのへんの演出は、洒落ている。
ブラックジャックやレオのカメオ出演もニクい。
今後の展開に期待したい。