観て、聴いて、読んで、体験したアイテムの感動ノート
12モンキーズ
テリー・ギリアム監督の、1996年公開作品。

あれよあれよという間に、どんどん話は展開して行き、悲劇的な結末に到るまで、息をつかせない。
先が気になり、最後まで怖い。
映画界の問題児と言われるギリアム監督だが、この作品にしろ、アカデミー賞に輝いた『フィッシャー・キング』にしろ、他人が書いた脚本で映画を撮れば、「ちゃんとした」エンターテインメントをやれることが判って、痛快であった。
(「ちゃんとしてない」作品、『バロン』や『未来世紀ブラジル』も、自分は大好きだが)

公開当時、この映画を観たときに、昔読んだ小説で似たストーリイのものがあったなあ…と思っていた。
公式には、この映画はフランスの実験的SF映画『ラ・ジュテ』を原案にしていると言われている。
事実、ストーリイのおおまかな部分は『ラ・ジュテ』の相似形である。
また、ヒッチコック監督の『めまい』の要素も効果的に取入れている。

それとは別に、破滅的なテーマで似ている小説があったのだ。
ジェイムズ・ティプトリー・Jr.作の『エイン博士の最後の飛行』という短編SF小説である。
飛行機で世界中に殺人ウィルスをばらまいて廻るという設定、絶望的な中にも美しい語り口など、脚本をつくる際に参考にしたことは疑いない。

ためしにネット検索してみたら、結構有名なことらしい。
しかしどうも、公式には原案とされていないらしく、『12モンキーズ』は『エイン博士』のパクリだとも言われているらしい。
自分はどっちも好きだ。両方知ってる人が、両方好きなんだから、それでいいのだ (笑)

この映画で、マデリーン・ストウの美しさに痺れた。
ブルース・ウィリスの良さを再認識した。
ブラッド・ピットのぶっとび演技に拍手した。

レイクサイド マーダーケース
2004年制作。

よく出来た2時間ドラマという感じ。
普通のミステリーである。音楽が良い。
薬師丸ひろ子と柄本明が良い。
杉田かおると鶴見辰吾の夫婦は、金八第一世代としては、感慨深いものが… (笑)

真犯人は、結局よく判らない…ってことでいいのかな?
まったくの部外者による、通り魔的な殺人という可能性も無くはない。
不確定なものに振り回されて、あたふたする人間達の滑稽さ、悲しさ。
それがテーマなのかな?
それにしては、ちょっと弱いかもしれない…

Danse Avec Le Condor / Los Calchakis
アルゼンチン出身のベテラン・フォルクローレグループ、ロス・カルチャキスの2003年リリース作品。

哀愁をおびたメロディーと、ダンス音楽としての楽しさが絶妙な選曲になっている。
たしかカルチャキスを初めて聴いたのは、高校生くらいの頃だったと思うが、その頃すでにベテラングループだったので、超ベテラングループである。
録音もすごく良い。もちろん定番の「コンドルは飛んで行く」も入っている。

ツィゴイネルワイゼン~ハイフェッツ・ヴィルトゥオーゾ名演集/ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン),アイズラー・ソロモン(指揮), RCAビクター交響楽団 他
1951〜53年録音。

これは、自分の父親が好きだったレコードである。
父親は、音楽の素養も知識も無かったが、良い「耳」を持っていて、音楽愛を持っている人だった。
昭和30年代初頭、大学は出たけれど、現在とは比較にならないような恐るべき不況のなか、就職先など全く無く、アルバイトをしながらなんとか食いつないでいたという。
友人の一人に、電蓄を持っている人が居て、発売されたばかりのこのレコードを買ったから聴きに来いと誘われた父親は、そこで初めて聴いたハイフェッツに魅了されたらしい。

自分でレコードプレイヤーやレコードを買う余裕など無かったので、しばしばその友人宅を訪れては、いろいろと聴かせてもらっていたらしい。

後年、カセットテープやCDで音楽を楽しめるようになってからも、この「ツィゴイネルワイゼン」
を聴くたびに、家族に向かって講釈をたれるのだった。曰く、
「この、音がちいさ〜くなっていくところの表現が、ハイフェッツと他のヴァイオリニストとの違うところなんだ。弦楽器じゃなくて、まるで笛の音のようだろ?」

つまり、華麗で派手な楽曲である「ツィゴイネルワイゼン」は、カデンツァの部分ばかり聴いてしまいがちだが、ハイフェッツの磨き上げられた技術の聴き所は、ピアニッシモの部分にこそある、というワケである。
我が父ながら、なかなか良いことを言うなーと、思ったものだ。

クレド/エレーヌ・グリモー(ピアノ), エサ=ペッカ・サロネン(指揮),スウェーデン放送合唱団 他
野生狼を保護し、狼と暮らすピアニスト、エレーヌ・グリモーの2003年収録作品。

アルヴォ・ペルト作曲「クレド」を中心に、ベートーヴェン、コリリアーノ、バッハと、一見脈絡のなさそうな選曲だが、これがグリモーの一筋縄ではいかないところだ。

ジャケット写真の、吸い込まれるような美貌に見蕩れるが、演奏に入って行くとなかなかハード。
良くも悪くも、変わったアルバムである。

ロドリーゴ:アランフェス協奏曲 [Hybrid SACD]/福田進一 (ギター),飯森範親 (指揮),その他
2007年録音&リリース。

ロドリーゴ作曲「アランフェス協奏曲」は、第2楽章(アダージョ)が有名だ。
普通、「アランフェス」というと、この第2楽章のことを指し、誰でも一度は耳にしたことがあるはずだ。美しく切なく、哀愁をたたえた部分である。
マイルス・デイヴィスやジム・ホール、チック・コリアなどのジャズミュージシャンも採り上げている。
しかし3楽章で構成されるこの協奏曲は、全体として快活で楽しい音楽なのである。
スペインに行きたくなる。死ぬまでに行ってみたい国があるとしたら、スペインだ。
たぶん行けないだろうけれど。

このアルバムには他に、アルヴォ・ペルト作曲「フラトレス」と、ヴィラ=ロボス作曲「ギターと小管弦楽のための協奏曲」が収録されている。
ペルトの「フラトレス」は実に良い。ギターと管弦オーケストラと打楽器で、限りなく透明な世界が描かれている。

ペルト:タブラ・ラサ/ギドン・クレーメル(ヴァイオリン),キース・ジャレット(ピアノ)他
エストニアの作曲家、アルヴォ・ペルトのECMレーベルにおける最初のアルバム。1984年リリース。

一曲目「フラトレス」では、クレーメルのヴァイオリンと、キース・ジャレットのピアノという面白い組み合わせ。
ほの明るく静謐。無音よりも静寂な世界である。
こういう音楽を、他に知らない。

現代音楽においても、また特殊な位置にいるひとらしい。
そして絶大な人気を誇っており、その作品を採り上げるアーティストも多い。
不思議な感じもするが、それだけ世界に必要とされている音楽だということだろう。

ECMの総帥マンフレート・アイヒャーとペルトとの邂逅については、『 ECMの真実 』という書籍に詳しい。

クワイエットルームにようこそ
現在公開中(2007年10月20日〜ロードショー)の、松尾スズキ監督作品。

かなり悲惨なストーリイだが、ギャグで笑わされる。救いもある。
内田有紀の使いどころはココ!という、監督の狙いがバッチリ決まった感じである。
宮藤官九郎も蒼井優も良い。
大竹しのぶの怪物ババアぶりは、名人芸だ。
ほんのチョイ役で一瞬だけ出演の有名人も複数。

あきらかに『カッコーの巣の上で』を意識した脚本だと思うが、面白かった。
最後はハッピーエンドというか、バッドエンドというか……
しかし余韻はさわやかだ。