2000年のデジタル・リマスタリングである。
マイク・オールドフィールドは、歌うのが好きな人である。
「歌いたがり&やめときゃいいのに&残念」な人、それがマイク・オールドフィールドである。
「黙ってれば美人なのに…」それが、マイクである。
同じく歌いたがりな坂本龍一と並んで「残念な天才」として双璧をなす人、それがマイクである。
タイトル曲「クライシス」は、まさにアルバムジャケットのイラストのイメージだ。
みどりいろの妖しい月光のような、不思議な魅力の大作である。
しかし、途中で割り込んでくる、オールドフィールド自身のヴォーカルで、この曲の魅力は台無しにされてしまう。じつに悲しいことだ。
なにしろ、LPではA面を占める大作なだけに、はじめて聴いたときの残念感は大きかった。
「マイクの奴、またやっちゃったよ…」みたいな (笑)
B面になると、一転して秀逸なヴォーカル曲が並ぶ。
不朽の名曲「ムーンライト・シャドウ」は、マギー・ライリーのヴォーカル。
全英4位のヒット曲だ。
のちに天才少女アゼリン・デビソンがカヴァーして、これもヒットしている。
「イン・ハイ・プレイセズ」のヴォーカルは、イエスのジョン・アンダーソン。
この唯一無二な歌声と、オールドフィールドの演奏は理想的なコラボレイトを聴かせている。
マイク・オールドフィールドのポップナンバーで、男性ヴォーカル曲には見るべきものがないというのが定説だが、この曲だけは異彩を放っている。
たしか、ヴァージングループ会長のリチャード・ブランソンが、「男一匹・ぶらちん気球の旅」(そんなタイトルでは無かったが、イメージです、イメージ (笑))を決行したときの公式テーマソングになっていたのが、この曲だったと思う。
マイク・オールドフィールドの全作品中、ヴォーカル曲の最高傑作が収録されたアルバムであるにもかかわらず、A面の残念さで味噌を付けた感が残る作品である。
このCDは、2000年にデジタル・リマスタリングされたものだ。
80年代に発売されたCDと聴き比べると、あきらかに解像度が違う。音が豊かに聞こえる。
これが技術の進歩というものか。
LPではA面を占めていた、25分の大作「タウラス2」は、アグレッシブでパワフルで、好きな曲。
B面にはヴォーカル曲を含む小品が並ぶ。どれも佳作である。
オールドフィールド自身も歌っているが、ボコーダーを使ったりして節操を保っているので、まだ安心だ (笑)


