観て、聴いて、読んで、体験したアイテムの感動ノート
めまい
1958年製作のアメリカ映画。
アルフレッド・ヒッチコック監督作品である。

高校生くらいのときに観た印象では、マデリーン役のキム・ノヴァクが美人とは思えなかった。
しかし最近観直したら、なるほど納得である。
クールフェイスに、肉感的なボディ…
ブロンドヘアーをアップにして、シルバーグレーのスーツでキメると、そこはかとなく立ちのぼる超現実的な美。
世のオヤジたちはノックアウトである。
小僧には解らぬ幻惑の世界なのだった。

経年劣化で傷みが激しかったフィルムを修復するため、世界中から現存するリールを集めて、莫大な資金を費やして修復されたマスターは、とても美しい。

デザイナーのソウル・バスによるタイトルバックでは、映画史上初のコンピューター・グラフィックが使用されている。
新しもの好きのヒッチコックらしい、斬新さだ。

能登の白クマうらみのはり手 (THE VERY BEST OF Tatsuhiko Yamagami)/山上たつひこ (著)
今月の新刊。

かつてギャグ漫画で一世を風靡した、山上たつひこのベスト撰集、第一弾である。
1970年代中期から、1980年代前期までの短編から選ばれている。

ほぼ20数年ぶりに山上漫画を読むが、かつてあれほど大爆笑した作品が、何故か全く笑えない。
作品が時代とともに古くなるのは仕方の無い事だが、読む側の人間も歳をとるのだ。
これも仕方の無い事だ。

全く笑えないのだが、破壊的でアナーキーな作風には改めて驚く。
そして、作品のカオスを支えるのは、緻密で丁寧な仕事。
Gペンの切れ味も鋭い独特の絵柄は、他に似ているものが無い。

ケルカン・マ・ディ ~ 風のうわさ/カーラ・ブルーニ
2002年リリースのファーストアルバム。

100万枚以上売れているそうな。
たしかに良い。曲も良いし、ハスキーヴォイスのフランス語は官能的。

華麗な経歴に加えて、(ウィキペディアによると)付き合った男たちの顔ぶれも凄い。
ミューズか、はたまたファム・ファタールか?

細野晴臣 STRANGE SONG BOOK-Tribute to Haruomi Hosono 2 /オムニバス
2008年リリース。
細野晴臣トリビュートの第二弾である。

豪華な参加ミュージシャンで、第一弾にも増して面白い。
改めて細野ミュージックの幅広さを感じるラインナップだ。
大貫妙子の「ファム・ファタール」は、じつに良い。
本人(大貫)のアルバムに収録しても良いと思えるほど、しっくりハマっている。

ジャケットの装画は、前作に引き続き、タイの漫画家ウィスット・ポンニミット(タムくん)である。このコラボレーションは大正解である。

タムくん、日本に紹介された頃から絵は知っていたが、漫画の上手い小学生(現在は中学生くらい?)かと思っていたら、1976年生まれだそうな。結構なオトナである。
あのイノセントな画風は宝物だと思う。

ライヴ・オーヴァー・ヨーロッパ 2007/ジェネシス
2007年、突然リユニオンして大規模なヨーロッパ・ツアーを行ったジェネシス。
フィル・コリンズ、マイク・ラザフォード、トニー・バンクスの三人、そしてライヴでは古くからのサポートメンバーだったダリル・ステューマーとチェスター・トンプソンが正式なジェネシスのメンバーとしてクレジットされてるのが、ファンとしてはなんだか嬉しい。

しかしなぜ、この時期になってリユニオンか。
フィル・コリンズは一通りやりたい事をやり終わって、ちょっと古巣が懐かしくなったのか。
それとも、じつは財政的に逼迫していたのか。

全員、年齢が50代も後半になって、体が動く今のうちに集大成をやっておきたかったのかも知れない。
選曲は、ジェネシスのファンがライヴでやって欲しいと思っているであろう曲のオンパレード。
フィル・コリンズのヴォーカルは、一部キーを落として歌う曲もあったが、おおむね昔のまま。
30年以上前のヴォーカルを再現するコリンズは、やっぱり凄い。

ピーター・ガブリエルにも声をかけたらしいが、熟慮の末、不参加となったようだ。
ガブリエル参加の場合、コリンズはドラマーとして演奏に徹する予定だったそうだ。
ああ、残念。

いのちの食べかた/森達也 (著)
2年ほど前に読んで、感銘を受けた本。

牛や豚が、どうやって殺され、肉になって、スーパーの店頭に並び、我々の口に入るのか。
パックになったブロック肉は知っていても、実際に牛や豚が殺されるところを見る人は少ない。

東京の芝浦にある「と場」(現在は「屠殺場」とは言わないらしい)への取材を通じて、被差別部落問題、そして戦争問題へと、考察は広がって行く。

子供に解いて聴かせるように書かれた文体で、小学校高学年くらいなら楽に読める。
内容はある意味ショッキングだが、深く、濃い。

ダンサー・イン・ザ・ダーク
2000年製作の、デンマーク映画。

無実の罪で処刑される、目の不自由なシングルマザーの悲劇。
あまりに辛い内容で、二度とは観たくない映画だが、森達也著『死刑』を読んでいる時に、以前観たこの映画の事を思い出していた。

映画はミュージカル仕立てで寓話的、一見荒唐無稽に見えるが、まったくあり得ない話ではない。
かつて我が国でも、このような冤罪は有った。
いや、もしかすると今現在も、無実の処刑は粛々と行われているのかもしれない。秘密裏に。
(憎むべき犯罪は有る。しかしその報道は、真実を歪めた形になっている場合が多い。ワイドショウや週刊誌はウソにまみれている。新聞やNHKも信用出来ない。インターネットも然り。しかし一般市民は、それらから情報を得るしか方法はない。
何事も鵜呑みにしないように。すべてを疑って、感覚と目を曇らせないようにしなくてはいけない。絶望してもいけない。無関心になるのが最も不味い。)

主演のビョークは、演技も歌も素晴らしい。
まさに魂の絶唱。
それだけに、ラストのショックはメガトン級だ。

死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う/森達也 (著)
今月の最新刊。
以前、『いのちの食べかた』を読んで感銘を受けて、気になる存在だった森達也氏の新刊なので、手に取ってみた。

『死刑』というショッキングなタイトルだが、この本は死刑という制度について取材し、考察したドキュメンタリーだ。
犯罪被害者の遺族、確定死刑囚をはじめ、国会議員、刑務所長、刑務官、元裁判官、元検事、弁護士、その他関係者が実名で登場する。

衝動と取材力で、徹底的に「不可視」化された我が国の死刑制度の不条理に挑んでいる。
死刑廃止か。存置か。
非常に重いテーマで、3年以上かけた大仕事。
エピローグに至っても、スッキリ納得…というわけには行かない。

しかし、読んで良かった。
死刑は、自分が日常、まったく気にかけた事も無い現実だ。
我が国には、死刑というシステムが厳然としてある。
多くの死刑囚が、絞首の刑に処されて来た。
その中には、明らかな冤罪によるものも有った。
自分の無知と無関心は、それだけで罪のような気がしてくる。

とても読みやすく、一気に読んでしまった。
これからは、日々起こる凶悪な事件のニュースを見る目も、ちょっとだけ変わるかもしれない。