観て、聴いて、読んで、体験したアイテムの感動ノート
ブラック・ダリア
2006年製作のアメリカ映画。
ブライアン・デ・パルマ監督作品である。

デ・パルマ監督作品は、いつも70点くらいだ。
何故かいつも、それなりに期待して観るのだが、最終的にはその程度の作品が多い。
スッキリ爽快というのは滅多に無くて、だからといって深いわけでもない。
独特のヌルッとした撮影が魅力的だが、映画を観終わった後の満足度で言えば、やはり70点クラスだ。

この作品もその例に漏れず。
俳優は悪くないのに、何か盛り上がらずに感動が薄い。
ナニが原因なんだろう…持ち味と言ってしまえばそれまでなのだが。

First You Build a Cloud / Andy Summers, Ben Verdery
2007年リリース。

ポリスのギタリスト=アンディ・サマーズと、クラシック畑のギタリスト=ベン・ヴァーデリーのコラボレーション。

サマーズのストレンジな個性は充分に発揮されているものの、演奏は聴きやすく気持ちいい。アンビエントな要素もある秀作である。
ポリスの名曲「ブリング・オン・ザ・ナイト」が新解釈で演奏されたり、バッハの「サラバンド」が聞こえてハッとしたり、構成も気が利いている。

Mike Oldfield: Tubular Bells, Part 1 (Version for Two Pianos and Two Synthesizers - Version for four pianos) / Piano Ensemble
2008年リリース。

マイク・オールドフィールドの『チューブラー・ベルズ・パート1』の、ピアノ演奏。
カナダのMarcel Bergmannという人が編曲したものを、4人のピアニストによるPiano Ensembleというグループが演奏している。
オールドフィールド自身はノータッチらしい。

何故かパート1のみ2バージョン収録されている。(パート2には興味無し?)
1つめのバージョンは、2台のピアノと2台のシンセの演奏。
非常に安っぽく、なぜシンセを使ったのか、意図が不明だ。

2つめのバージョンは、4台のピアノによる合奏。
これはこれで、コンセプトもハッキリしているし面白い。
試みとしてはアリ、である。
どうせなら、チープなシンセ導入版など捨てて、ピアノ4台でパート1〜2通しにして欲しかった。

Beethoven: Piano Concerto No.3; Sibelius: Symphony No.5 / GLENN GOULD (p), HERBERT VON KARAJAN
グレン・グールド(ピアノ)と、ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)の共演。
1957年のライブ音源が、ソニークラシカルから本年正式にリリースされた。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番と、シベリウスの交響曲第5番。
録音はそれほど良くない(ベルリン・フィルの迫力がイマイチ)が、グールドのピアノは素晴らしい。

ロリータ
1962年製作の、アメリカ映画。
スタンリー・キューブリック監督作品である。

ナボコフの同名小説の発表から7年後の映画化だが、この題材を選ぶところがキューブリック監督の一筋縄ではいかないところだ。

昔観たときはピンとこなかったのだが、原作を読んでから改めて観ると、相当よく出来た映画だと解る。
今で言うところの放送コードとか、映倫とかに全く抵触しないやりかたで、この難しい映画化を実現している。(もっとも、原作小説にも直接的な表現は殆ど登場しない)

キューブリック監督ならではの、非常に禁欲的な手法で撮られているので、俳優たちの演技力がとても重要な要素になっている。
主人公ハンバート教授役のジェームズ・メイソンと、ロリータの母親役のシェリー・ウィンタース。この2人が、映画に現実味を与えている。
映画終盤、ハンバートがロリータにすがってメソメソ泣くシーンは、さすが名優と唸らされるところだ。

トリックスターとしてストーリイをかき回すクレア・クイルティを演じるピーター・セラーズ。この人の怪人ぶりが異彩を放っているので、物語が少し解りづらくなっているのだが、これは当然キューブリック監督の確信犯だ。それは翌年に製作された『博士の異常な愛情』で証明される。

ロリータ役のスー・リオン。昔見たときには、なんでこんなに特徴の無い女の子を起用したのだろうと思ったのだが、今見ると確かにはまり役だ。
その後の彼女の実生活での、波乱に満ちた人生を思う時、いよいよキャラクターが重なって見えてくる。

それと、さすがにキューブリック映画らしく、カメラは超一級だ。

ロリータ/ウラジーミル・ナボコフ (著), 若島正 (翻訳)
1955年に発表された小説の、新訳版。
2006年に文庫化された。

1980年代初頭に、いわゆるロリコンブームが興った。
漫画界では、吾妻ひでおが絶頂期を迎えていた時代だ。
高校の漫画研究部に所属していた自分たちも、少なからず影響を受けたわけだが、当時(というか今も)その語源となったナボコフの小説『ロリータ』を読んだ人間は、そう多くないはずだ。

ポリスのヒット曲『高校教師』(思えばヒドい邦題だ)の歌詞で、スティングが歌う一節
( それでも彼女を見ると 体の震えが止まらない ナボコフの小説に出てくる あの中年男みたいに )も気になっていたので、大学生の頃一度読もうとしたが、何ページも読まずに途中でやめた。
暗喩や言葉遊びの多い文章で、ヨーロッパおよびアメリカ文化に造詣が深くないと意味不明な部分が多く、楽しめなかったのだ。
後で知ったことだが、当時の翻訳は誤訳も多かったらしい。
亡命ロシア人のナボコフが、米国で英語で書いた小説を、日本語に翻訳するのは複雑なことだったようだ。

その後、レンタルビデオでスタンリー・キューブリック監督の映画『ロリータ』も観たが、いまいちピンと来なかった。

最近になって新訳版が出たというので、もう一度チャレンジしてみた。
やはり独特の言葉遊びが解りにくいのだが、決定版と銘打つだけあって、これなら読める。
なんとも一言では表現しきれない、哀しく滑稽な、ロマンティックな…
隠喩や言葉遊びを原語で読んでいないので、正確には伝わっていないはずだが、とにかく濃く深い。
巻末の注釈と行ったり来たりしながら、主人公の濃密な意識の流れをたどって行く。

たしかにスキャンダラスな内容ではあるが、格調高い作品である。

グレイテスト・ヒッツ・オブ・ザ・60’s/トニー・ベネット
2006年、トニー・ベネットの生誕80周年企画でリリースされたベスト盤。
60年代のヒット曲が勢揃い。

3分足らずの間に、歌い上げてまとめる…この時代のスタイルだ。
雨のそぼ降る春の夜に聴いたりするのも良い。
「ザ・グッドライフ」という曲が好きだ。

バッハ:ゴールドベルク変奏曲/セルゲイ・シェプキン(ピアノ)
1995年録音。

グールドの1955年盤からちょうど40年後に録音されたゴールドベルク。
いろんなレヴューで「グールドの呪縛からの脱出」とか、「全く新しい解釈による」とか、「絶対に外せない名盤」とか、絶賛されているので聴いてみた。

新しさを出そうとしてか、遊びすぎているような気がする。
テンポが安定しないというか、なんだか安心して聴いていられない。
無理にこんな演奏にすることは無いんじゃないの?という感じだが、これがこのピアニストの個性なのだろうから仕方ないのかも。

先日(4月20日)、NHK-BS2の『クラシックミステリー 名曲探偵アマデウス』という番組で「ゴールドベルク変奏曲」が取り上げられていた。
番組内でも解説されていたが、これは数学的な美しさを持つ特殊な楽曲なのだ。
本当に微妙な演奏のニュアンスの違いで、全く違ったものになる。
だから魅力的で、いろんな演奏を聴き比べてみたくなるのだけれど。