観て、聴いて、読んで、体験したアイテムの感動ノート
ロリータ/ウラジーミル・ナボコフ (著), 若島正 (翻訳)
1955年に発表された小説の、新訳版。
2006年に文庫化された。

1980年代初頭に、いわゆるロリコンブームが興った。
漫画界では、吾妻ひでおが絶頂期を迎えていた時代だ。
高校の漫画研究部に所属していた自分たちも、少なからず影響を受けたわけだが、当時(というか今も)その語源となったナボコフの小説『ロリータ』を読んだ人間は、そう多くないはずだ。

ポリスのヒット曲『高校教師』(思えばヒドい邦題だ)の歌詞で、スティングが歌う一節
( それでも彼女を見ると 体の震えが止まらない ナボコフの小説に出てくる あの中年男みたいに )も気になっていたので、大学生の頃一度読もうとしたが、何ページも読まずに途中でやめた。
暗喩や言葉遊びの多い文章で、ヨーロッパおよびアメリカ文化に造詣が深くないと意味不明な部分が多く、楽しめなかったのだ。
後で知ったことだが、当時の翻訳は誤訳も多かったらしい。
亡命ロシア人のナボコフが、米国で英語で書いた小説を、日本語に翻訳するのは複雑なことだったようだ。

その後、レンタルビデオでスタンリー・キューブリック監督の映画『ロリータ』も観たが、いまいちピンと来なかった。

最近になって新訳版が出たというので、もう一度チャレンジしてみた。
やはり独特の言葉遊びが解りにくいのだが、決定版と銘打つだけあって、これなら読める。
なんとも一言では表現しきれない、哀しく滑稽な、ロマンティックな…
隠喩や言葉遊びを原語で読んでいないので、正確には伝わっていないはずだが、とにかく濃く深い。
巻末の注釈と行ったり来たりしながら、主人公の濃密な意識の流れをたどって行く。

たしかにスキャンダラスな内容ではあるが、格調高い作品である。