観て、聴いて、読んで、体験したアイテムの感動ノート
ミツバチのささやき
1973年製作の、スペイン映画。
寡作な映画作家、ビクトル・エリセ監督の長編第一作である。

日本では、1985年に公開された。
当時大学生だった自分は、友人と二人で観に行った。
ミニシアターの先駆「シネ・ヴィヴァン六本木」(1999年に惜しまれつつ閉館)での単館ロードショウだったと思うが、映画好きな人たちには口コミで人気が広がっていた映画だった。

たいへんなものを観てしまった気がした。
スペイン内戦の不条理が人々に与えた喪失感、倦怠感、悲しみ…が一つのテーマになっているが、主演のアナ・トレント(当時7歳)の無垢な瞳の強さ、少女の心理世界の瑞々しさ、危うさ…が、圧倒的な映像美と寡黙なシナリオによって描かれていた。

映画館を出て、一緒に行った友人と喫茶店でコーヒーを飲んだが、二人とも無口になってしまった。自分は、今観てきたばかりの素晴らしい映画を、自分の中で反芻していたのだけれど、その友人もたぶん同じだったのだと思う。

アナ・トレントは自分と同世代で、この映画以降も数本のスペイン映画に出演しているが、残念ながらみな平凡な作品だ。
『ミツバチのささやき』は特別な、奇跡のような映画だったのかも知れない。

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